※この記事は、私が2012年から運営し2020年に閉鎖したホームページから移転した記事です。体験談などには古い情報が含まれますのでご注意ください。詳細は→「美容の知識・技術」カテゴリーについてをご確認ください。
薬を使う施術をしないと稼げない
ここでは私が美容の仕事に対して悩むことになった、に美容業界が利益を出すためのシステムについて書きます。
皆さんがネットで目にしたり、参考にする雑誌やヘアカタログに載せられているのは、今風のヘアスタイルです。そこから、これが綺麗・カワイイとされるものですよ、といったスタイルの傾向が掴めるのですが、考え方によっては美容業界が今、皆さんにやってほしい・お勧めの髪型とも言えます。
私が美容師をしていた頃は、目の上ギリギリの長さの前髪だったり、重ためなスタイルといったものが人気でした。そしてそのうえで軽くウェーブがかかっていたり、内巻きになっていたりするヘアスタイルが多く、地毛のままでも出来そうなストレートのヘアスタイルはあまり載っていませんでした。
それはどうしてか?
それは美容業界全体が、もっと多くの人にパーマをかけてもらいたかったからです。当時はカラーはほとんどの人がしていましたが、それに比べてパーマはかけていない人も多く、まだまだ開拓の余地がありました。パーマをかけてくれる人を増やせば美容院にも、美容院に薬剤を売る会社も、薬剤を作る会社も、業界全体にメリットがあるのです。
そして、美容院で一番材料費がかからないのはパーマ液です。
パーマは基本的にカラーよりも料金が高いことが多いので、パーマの方が利益が出る。その為、数年前からパーマの種類自体が増えてきました。
新しいものが出ればお客さんにもすすめやすいですし、一度パーマをかけるとパーマが落ちかけてきた時にスタイリングがしにくくなるので、ストレートにするにしろウェーブにするにしろ、またパーマをかける人が多いです。
…ということは、コレの繰り返しになります。さらに、パーマを繰り返すと髪がかなり傷みます。もちろんカラーもしている人の方が多いので、当然、大抵の人は髪が傷んでます。
ここで登場するのが…そうです、多くの処理剤やトリートメントです。
傷んだ髪はトリートメントをしても元には戻りませんが、トリートメントは髪にするお化粧のようなものなので、手触りを良くしたり髪を綺麗に見せることが出来ます(参考→トリートメントについて)。特に、カラーもしていてパーマも繰り返しかける様な美容の関心が高いお客さんは、毎回トリートメントをするようになります。
ここまでやれば、多くの利益が出せますよね。
ちなみに、この薬は髪にやさしいから大丈夫ですよ。この薬は化粧品登録のものなので傷みませんよ…なんて言っている美容師もいましたが、それは事実ではないのでくれぐれも信じないでください。薬を使えば、当然のことながら髪は傷みます。
髪に薬剤をつけて人工的に髪の形を変えているのだから、髪に負担がかかるのは当然です。どの程度髪が傷むかなどはお客さん髪質や美容師のやり方、お客さん自身の手入れの仕方で変わってくる面も多いとは思いますが、カラーやパーマをすれば髪は傷むものです。
薬が進化していることもあり、髪に処理剤をつけてパーマをかけると施術直後は手触りが良いので、傷まなかった気になってしまう。”その時だけ”は髪のダメージを実感しにくかったりするので、それがまた質が悪いと思うのです。
私が美容師をしていた当時は低料金化も進んで、カットやカラーだけでは利益が出しにくくなっていました。
美容師もボランティアで働いているわけではないので、多くのお客さんにカラーだけでなくパーマをかけてもらえるようにしていく、というのはある程度は必要かなという思いもありましたが、私は美容業界が生み出すそのシステムが好きではなかった。
私はダメージを受けた髪は美しくないし扱いにくいので、好きではありません。せめてもっとダメージレスで出来るパーマやカラー剤が開発されればいいですね。髪に自分で回復する能力があればよかったのにとつくづく思います。
薬剤で気が付いたこと
例えばパーマ液。
パーマをかけるには、美容業界的にはいろんな薬を使ってもらいたいわけです。いろんな薬とは、パーマの一液・二液のほかに前処理・中間処理・後処理、その他もろもろ。確かに、前処理などが必要なこともあります。
しかし、こんなに処理剤をつけて薬が効くのか・・・?という疑問をずっと持っていました。
パーマの一液も強い薬から弱い薬まで、たくさんの種類の薬があります。それこそその一液を髪の状態に合わせて使えば、必要以上のダメージを与えずにパーマをかけることが出来るはずなのに(パーマの技術についてはこちらを参考にしてください)、なぜそんなに多くの薬を使う必要があるのか。
それは、ダメージヘア用の弱いはずの薬や、傷ませずにパーマをかけられますなどとうたっているパーマの薬の一部は、弱いはずの薬なのに強く設定してあるものもあったからです。
なぜか?
その理由は、多くの処理剤を使えば薬の効果は当然弱まりるので、多くの処理剤をつけてもパーマがかかるように強めにしていたのでしょう。そのような薬の説明には、この処理剤はこのタイミングでこのくらいの量を必ず付けてくださいと言われます。
そりゃそうですよね。その処理剤を言われたとおりに塗布しなければ、髪にその薬を使う美容師でも想定外のダメージを与えてしまうのですから。美容師だって薬は基本的には説明されたとおりに使います。最初からパーマ液と処理剤使うこと前提の技術ということで、その流れで覚えます。
その結果、どうなるか。
パーマのかかりあがりの手触りは、今までのものよりいいでしょうね。傷まなかった、なんて感じてしまうくらいに。薬剤を作る側でも薬剤を売る側からにしても、多くの薬を使ってもらえれば利益になります。もちろん美容院側も少しの手間をかけて多くの薬・処理剤をつかってパーマをかければ、高めの料金設定でできますから利益になります。
しかし、私はそういう使い方をしたくはありませんでした。学び続け考えれば考えるほど、結局はシンプルなものに行きつくのですが、上記のような利益を出すためのシステムは、自分だけでは変えようもなく、どうにもならないことにも気が付いてしまいました。
経済的な利益ばかりを優先させる今の考え方は、どうしても好きになれないのです。かといって、カットやブローだけ、必要な人にだけ必要な施術だけでは利益を出しにくいシステムに組み込まれている。
資本主義のシステムに合わせ、美容業界で働いていくことに限界を感じ、私は美容の現場から離れました。
これは美容業だけではなく、他の業界でもこういった利益を生み出すシステムが作られているのでしょう。それは時に、人を傷つけることもあり、歴史や文化を失う危険性も出てくる。
美容業界で働いても生活が苦しくなく、こんなことを考えなければ、楽しく美容の仕事ができただろうに。