美容師の労働環境

美容師の労働環境

美容師の仕事から離れて数年が経つので、今と私の知る美容師の労働環境には、若干の違いがあるかもしれません。しかし、ほんの数年でそこまで大きくは変わらないでしょう。

美容師の労働環境に関しては、悲しいことに、もうお話にならないくらい悪いです。

「手に職」の仕事なので、美容師不足ということもあり、労働環境にさほどこだわらなければ働くのに困らない仕事ではありますが、労働環境が悪すぎて働きたいと思える人が少ないのでしょう。


まず、社会保険完備のところは少ないです

あるとしたら大手、中規模サロンの一部しかないです。美容院は個人店が多いですから、基本的に社会保険はなしと考えていいような気もします。

すべて社会保険完備するべき環境であっても、そこまで出来る個人店は少ないのでしょう。個人店の場合はほぼ、自分で国民年金・国民健康保険で負担することになります。

私が働いていた頃、正社員とされる人たちの休みは月6~7日のところが多かったです(例、毎週火曜+2日とか)。もちろん月8日のところもありますし、少ないですが完全週休2日の美容院もありました。今はもう少し増えているでしょうか。

また、有給は無いお店がほとんどです。「有給が取れない」ではなく、「有給が無い」んですよね。

正社員なのに、どういう事??という感じがしますが、それが現実です。

社会保険完備の美容院では有給がとれるかもしれません。ただ、有給が与えられても使用できる月(比較的お店が混まない時期)が限定されていたり、使える日数も少ない傾向にあるようです。

美容院で正社員として雇われていても社会保険なし・有給なしということは、それなりの責任がかかる仕事をし、それだけの時間を使っているのに、条件はアルバイト・パートとほとんど変わらない…というより、他のアルバイト・パートの方がまだ労働条件が良い可能性の方が高いですね。

厳密に言うと、アルバイト・パートのような感じで労働契約自体が、正社員の契約ではないのかもしれません。

そして、年間休日はほかの仕事と比べれば圧倒的に少ないです。多くは100日いかないのではないかと思います。私が美容師をしていた頃は、年平均80日前後でしょうか。

労働時間は短くても10時間は確実に超えます。(平均的な美容院で10時オープン、19時受付終了が多い。大体はオープン30分前には出勤、19時以降お客さんが帰り次第片付けて終了)

それにプラスして、ミーティングやら勉強会やら練習(朝・夜)があります。

お昼休憩は長くて30分位でしょう。大抵は食べ終わったら終わりなので、15分前後。お店が混んで忙しい時は薬の放置タイム数分で何か軽く口に入れたり、食べられないことももちろんあります。

拘束時間が長すぎて自分の時間はとても少ない為、私は働くこと・生きるのが嫌になるときもありました。

給料に関してですが、私が美容師をしていた頃はアシスタントで15・16万くらい~、スタイリストで20・21万くらい~でした。おそらく今はもう少し高くなっているでしょうが、年収は一般的には300万位ではないでしょうか。

歩合制だったり、現場から離れて経営・管理者側にまわれば、もう少し稼いでいる方もいるとは思います。

正直に言うと、女性で結婚して子供を産んだらパートで働く、とかいうのであればそのまま現場で技術・接客の提供をしていても生活できるとは思います。

しかし、もし独身で一人で生きていく、もしくは家庭を持って自分がメインで収入を得ていくというのであれば、現場を離れて経営・管理者側にまわるか、自分の店を持ってある程度しっかり稼ぎ出す事をしないと生活していけないでしょう。

ちなみに、ボーナスをもらえるところも少ないです。もらえても給料の何倍とかはもらえないです。

身近に歩合制で必死に稼いでいる方が何人かいらっしゃいましたが、ある人は健康を害してまで頑張っていました。

またある人は美容師としての不規則な生活、ストレスからか子供に恵まれず、さらにお店に迷惑かけられないから・金銭的にも厳しいからといって不妊治療もままならず・・・という生活を送っていました。

何を優先するかは人それぞれですが、「幸せとは何か」を考えさせられましたね。

きつい仕事なのに給料低いんです。今の産業構造上、仕方がないのかもしれませんが。

よく好きじゃないとできないといいますが、好きでももっと人並みの生活が送りたいから辞めるというかたも多いと思います。給料が安いのはサービス業である以上、日本の産業構造からして当然なのかもしれませんし、その業種を選んだのは自分です。

しかし、好きで選んだのだとしても、この労働環境と将来性を考えた時、他の道を選ばざるおえない人も多いのでしょう。

また、体は否応なしに衰えていきます。若いころと同じように体を酷使して働き続けることは難しいですから、同じペースでは働けません。自分のお店を持たない限り、割に合わないのです。

ただ、自分のお店を持つのにも今は美容院がオーバーストアな状態なので、本気で稼ごうと思ったらお店を出す場所や広告宣伝費、お店の売上がある程度安定するまでの運営資金も必要ですから、まとまったお金が必要でしょう。

自転車操業になったり、運営資金の不足に悩まされたり、結局お店を閉めて借金を背負うリスクがあってもいいのであれば600~800万位あれば店をオープンすることは出来ると聞きましたが…私ならその選択はしないです。

でも、普通に働いているだけでは美容院に、美容業界に時間もお金も搾取され続けます。基本的に美容業界は労働条件でいえば無法地帯です。

美容師になってまずしなければいけないことは、労働基準法があることを忘れることです。

また、お盆休み・年末年始もまとまった休みが取れるという常識は美容業界にはないということも覚えないとやってられません。

あと、時給の計算はしないことです。…絶望します(笑)

美容師辞める人が多いのも仕方がない気がします。みんな自分が大切ですから。我慢が出来ないから、根性がないから・・・とかそんな問題じゃないですよね。

ほとんどの美容師は割に合わないからやってられない、そんな中で将来のことを考えたら不安が募っていく。だから辞めていくのでしょう。

髪を衛生的に整え、美しくするという、人にとって必要な素晴らしい仕事なので、もっと美容師にとって働きやすく、稼ぎやすい仕事になればいいのになと思わずにはいられません。

昔は、住み込みで働きながら技術を身に付け、そこで一人前になって新店を任されたり、独立して自分の店を持ったりと、現在よりは自分の時間を費やしても報われる環境であったのかもしれません。職人の世界というのでしょうか。

また、おそらくそういった環境は大学進学に興味のない人、お金(学費)が無く働き口が必要な人や、手に職つけたい人にとっては必要な仕事であったのでしょう。

何も持たない若者が自力で生きていく力を持つために、そういったセーフティネットとしての働きながら生活も出来る環境、というのも必要だったのだと思います。

現在はそういった時代ではなくなっているので色々と変わってきてはいるのでしょうが、まだまだ改善されないことが多く、労働環境も悪いままなのでしょう。美容師は国家資格で資格保持者の独占が認められている仕事ではありますが、その分閉鎖的な面があり、急激な変化や改善はされにくいのかもしれません。

そういった環境でも、改善していこうとしている美容師もいるでしょう。

その中で自分に出来る仕事をコツコツと、お客さんに提供している美容師もいるでしょう。本当に、尊敬します。

もう少し、労働環境が改善されて美容師から離れる人が減っていったらいいなと、願わずにはいられません。