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独学で「なんちゃって和裁」ー単衣の紬

独学で「なんちゃって和裁」ー単衣の紬

イギリスで着物を普段着として着るのであれば、着物の手入れはできる限り自分でできたほうがいい。だから和裁も出来るようになりたいと以前から思ってはいたのだが、ちょっと面倒だとも思えて中々始められなかった「和裁」。

自力で着物のメンテナンスをするために、遂に手を付けた。

一応1冊、いろんな着物の作り方が詳しく書かれている和裁の本を買ったが、私のような全くの初心者には難しい。素材、どういった構造になっているか、着物の文化や歴史を知るには良かったと思うし、和裁に慣れてきたらきっと理解できるものも多くなるだろう。

…ということで、着物を解いてみた方が分かりやすいはずだと考え、まずは洗濯に失敗した着物を解いてみた。なるほど、何とかいけそうな気がする、と思ったのでやったことは以下。

  1. 袷の着物を表地・裏地に分解し、それぞれ別で洗い、単衣の着物にする(母からもらった紬)
  2. 袷の着物を全て解き、洗ってから単衣に仕立て直す(サイズの小さい紬)
  3. 反物から単衣の着物を仕立ててみる

全て単衣の紬だ。

普段着に来ても洗える、洋服で言えばジーパン・Tシャツ的な着物が欲しかったので、それだけ出来ればいいと思っている。なんちゃって和裁。

なんちゃって和裁なので、袷は無理かもなあ…と思いつつ、上記1,2の紬は裏地が手元にあるので冬になったら袷にしてみたい。

1、袷の着物を単衣にする

手間はかかるが、これは結構簡単だった。

はい、分解

表地と裏地を離し、端の処理をすればOKだろう。既に着物の形になっているので特に難しいことはなく、気になることと言えば縫い方だろうか。

どう縫うかによって表面の縫い目の見え方が変わるので、あーだこーだと考えつつ縫ったが、自分の普段着だしこれでいいやと、やり過ごしたところが大きい。

誰でもできると思うけれど手間がかかるし、基本的には袷の着物の方がお洒落で素敵ではあるので、自分にとってその手間をかけてやる価値があるかは考えたほうがいいかもしれない。

2、サイズの小さい着物を仕立て直す

サイズが小さいので掃除用にと、普段からよく着ていたグレーの渋い袷の紬を単衣に仕立て直した。小さかったのは身幅と裄だったので、全て解いて仕立て直すしかないと言い聞かせつつ、ビビりながら全て解く。

本当に全て解くと一枚の布になるんだ!などと思いながら、ひたすら解く。

数枚の着物を解いてみて、着物の仕立て方は色々あることに気が付いた。基本の形はあれどこれが絶対とか正解というものはないのだから、気楽に自分のやりやすいように仕立てることにした。難しいことはできないし、本格的な和裁に必要な道具もないのだから。

同じくらいの角度から撮った写真で比べてみる。

衿の寝かせ具合や角度が違うので比べにくく、裄も違いが分かりにくいかもしれないが、直した後の方が腕回りがゆったりして見える。直した後の状態で、直す前の衿のように着れば裄はもう少し長さが出るだろう。裄をもう少し出そうか迷ったが、短い方が動きやすいし夏以外はアームウォーマーを合わせることが多いので、このくらいの長さにした。

また、自分の身長からしてもう少し袖は長い方が好みだと思い、バランスを考えて少し長さを出した。未熟でも自力でこうやって仕立て直したことで、着るときに裄を出すために衿の合わせを何度も修正せずに済むし、裾と前の幅を合わせるのも楽になった。

そして何より嬉しいのは、身幅を直したおかげで動いても前がパカパカと開かなくなったこと。サイズの合う着物が着易いと実感した。こう見るとやはり、小さかったなと思う。

縫い合わせる際に柄合わせが必要で上手くいったところもあれば、ちょっとしたズレが気になるところもある。簡単なのは無地とか細かい柄だろうなとは思うが、色柄によっては仕立て方で雰囲気が変わるので、これを考えるのは楽しいかもしれない。

3、反物の状態から単衣の着物を作る

ここまでやれば反物から着物を作ってみよう、ということで細かな縞が織りだされた紬の反物で仕立ててみた。

戦後から昭和中頃の絹の反物でかすかに変色しているようだが、普段着・初めて自分で単衣の着物を作るとなれば、やり易くこれで十分ということで購入。中古の着物とともに売られている古い反物は幅が狭かったり、長さが短かったりするので、現在のサイズ感では仕立てられない可能性があるが、使った反物は幅は少し短めだが長さは十分にあり、私のサイズでも作れるだろうと考えて選んだ。正解だった。

反物は、こういう風にグルグル巻きにされたの着物用の布。基本的には12メートル以上で長い!因みに使った反物は撮り忘れた。

仕立てる前に洗ってみて、単衣で仕立てた後に洗濯する際の参考にした。中古だし洗ってから着たいよね、ということで洗ってから裁断し仕立てていった。出来上がりがこれ(しわしわ 笑)。

グレーの紬の時よりも細かいところは良くできていたけれど、普段着で着るには裄が少し長かったかなあ…といった感じだが、汚れてもOK、自分で洗える普段着にはもってこいの着物が出来上がった。

ただ、生地がちょっと薄めなので寒い時期には着られない。袷にしても寒そうだし、単衣のまま着られるときに着る感じになるだろうか。

イギリスの夏はこれで快適に過ごせそうな感じだが、作り終わったのは夏の終わりだったので残念だった。着易いサイズで作ったので普段着としてたくさん着たいが、生地が古いのでどれだけ持つか気になる。大事に着よう。

独学で「なんちゃって和裁」

和裁本を買ってもいいかもしれないが、着物を解いてみるのが一番の勉強になると思う。

一応自力で単衣の着物を作ったけれど、着物ならではの細かいところは独学では難しいかもしれない。きちんとした着物、プロの仕事には必要な道具もあるだろうし、素人の「なんちゃって和裁」には限界がある。

昔、自分たちで普段着の着物を作っていた人だって、今の時代で商品になるようなクオリティの着物を仕立てて着ていた人ばかりではなかったのではないだろうかと、少し疑問に思う。礼装用やお洒落着であれば凝ったもの、美しいものを着たいとなるだろうが、普段着ならそこまでの手間やお金をかけて作らないのではないだろうか。

普段着のジーパン・Tシャツにはそこまでこだわらない私としては、自分で普段に着る着物は「なんちゃって和裁」でいい。

まだ反物があるので、普段着用にもう数着作る予定だ。ちょっと寒くなってきたので単衣を作る気にはなれない気もするが、夏用の透けた着物を来年に着られるように仕立てておきたい。

冬に普段着で気兼ねなく着られるように、いつか洋服を作る生地で暖かい着物を作ってみようかな。