恐怖の「イギリスに行きたい」

恐怖の「イギリスに行きたい」

海外に住んでいると、日本から家族・友人・知人からの「いつかそっちに遊びに行きたい」という言葉を聞く機会は少なからずあるだろう。

今度そっちに行くから食事しようよとか、お茶しながら話そうよ、くらいならこちらの負担にもならないし、仲のいい家族や友人で私が自ら何かをしてあげたいと思える相手であれば、観光に付き合ったり現地で何らかのサポートをするのも全く構わない。

しかし、大して仲が良くない人や長時間一緒に過ごすのは苦痛な相手、現地語や英語が全くできず現地での移動や予約等の全てを丸投げするような人、当たり前のように滞在中は私の家に泊まれると思っている人から「イギリスに遊びに行きたい」と言われると、内心は来るなって思ってしまう。

どれだけ振り回されるだろうか、どれだけ精神的に参るかを想像するだけで苦痛だ。どうやって断ろうかを考えるのも面倒だし、実際に断る時にも少なからず嫌な思いはする。

どんな会い方をするか、どんな過ごし方をするかは相手によるが、私にとって一番恐ろしいのは「両親が会いにくること」だ。

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「孫を抱っこしに絶対に行くからね」

遂にこのメッセージがきてしまった。

「いつか行く」とは言われていたが、先延ばしにしたり、イギリスに来たいという弟夫婦を巻き込んで連れてきてもらい私が関わる時間や機会を減らしたり、私も十分には英語ができないからツアーで来てと言おうとか、とにかく「のらりくらりとかわす」つもりだった。

しかし、私が妊娠したことと、母に病気が発覚したことで両親が会いに来る本気度が上がってしまった。最近の母からのメッセージには、イギリスに行くことを目標に病気の治療を頑張るとか、孫に会いに行きたい・抱っこしたいとか、そういった言葉が必ず入っている。

親とは距離を置きたくて当たり障りない対応を数年続けていたが、メッセージがくる頻度も上がっており、メッセージが送られてくるたびに緊張し、恐怖を感じ、とにかく絶縁したくなる。

コロナのおかげで簡単には海外旅行に行けない状態がしばらくは続くだろうし、母の病気の治療もどれくらいかかるか分からないので、両親が来れるのはまだまだ先になると思いたいが、いつか私の子供に会いに来ると考えるだけで既に私は鬱状態だ。

断りたい。来ないで欲しい。写真も送りたくない。関わりたくない。

親に対してこういった思いを持つことに、まだ罪悪感を感じてしまうが、これが私の本心だ。

病気の親に孫という希望を与えてあげた、現地に住んでいるからこそ親のイギリス旅行を充実させたものにしてあげられるなど、「親孝行できるじゃないか」などと綺麗ごとをいう人もいるが、余計なお世話だ。私は親孝行なんてしたくないし、関わりたくないのだから。

では、妊娠・出産のことを全て黙っていればよかったのか。

言わずにいれば、それはそれで後悔するかもしれないと思い親に伝えた。母の病気の発覚で、母が長くはないと思ったからだったが、そう思うのは今も変わらない。

私ができる範囲のことをやるしかない

いくら嫌でも来るなとは言えないし、いつか親は私と子供に会いに来る。

自分の精神的な安定を確保するために、その時どうするかを具体的に考えたのだが、どう考えても私たちの自宅に親の滞在は無理だ。理由としては田舎なので不便だし観光に向かない、親が寝る場所がない、私の精神的に無理、というところだろうか。

孫に会いに来るとは言っても、せっかくイギリスに来るのであれば観光がしたいはずなので、何らかのサポートは頼まれるだろうが、小さい子どもがいたらたぶん無理。ツアーで来てもらうか、単発で現地の日本人ガイドが案内するツアーに参加してもらったりして、滞在先はロンドンのホテルがベストだろう。

母の体調を気遣うとしたら、日本からツアーで来て全てプロにお金を払って面倒を見てもらった方が良い。ある程度の人数でバスで移動するほうが楽だろうし、英語が全く話せず自分では何もできない、基本的に自分では何も調べない両親にはツアーで旅行する方が向いている。

私が無理、とアッサリ断言することに不満はあるかもしれないが、私に出来る範囲での対応にするとしたらこうなる。

現地に娘が住んでいるとなると、すべて私がやってくれると期待するのが普通なのかもしれないが、それは私たちの親子関係が良好であったらの話だ。母と3泊4日や2泊3日の旅行でも、帰ってきたあと数日は鬱状態で寝込んでしまうほど、私の体調や精神状態が悪化することは実証済みで、またあれを繰り返したくはない。「親の海外旅行の面倒を見る」というのがどういうことかは既に経験済みなのだから、親に何を言われようと譲れない。

母だけではなく両親でくるとなっても私にはストレスで、どんな不快な思いをするか・させるかを考えると気が滅入るので、お互いの為に両親には自分たちができる方法で来て過ごしてもらい、私は自分のできる限りのことをするほうがお互いに良い思い出として残せると考えている。

海外在住にも関わらずわざわざ里帰り出産したり、親が産後の面倒をみに現地に来たりするほど仲の良い親子もいるらしいが、私たちの親子関係はそうではない。日本とイギリスで離れているおかげで親の影響は最小限で済むのだから、私にとってこれほど良い事はないと思うような親子関係だ。

英語が話せない、現地で何もできない大人は小さい子供と一緒

冷たいと言われようが、「そんな風にされる私達って可哀そう」というオーラを出されようが、何とかして私の家での滞在は防ぎ、小さい子供を抱えて親の面倒を見る状態は回避しなければならない。

なぜなら、英語が話せない、現地で何もできない大人は小さい子供と一緒だから。

何もできない小さい子供のようだけれど、日本語で立派に文句言ってくる分たちが悪い。しかも旅行という非日常のせいか、普段であればありえないような我が儘や要求もしてくる。基本的に人任せのクセに、だ。

普段から合わない人にこれをやられると、精神的なダメージは計り知れない。体にも悪影響が出る。思い返すと最悪な滞在だった、もう二度とこんなことはするまい、と思うような滞在になることは簡単に予想できる。

親との関係が良好であれば、親がする自分の子供への関わりはさほどストレスにならないかもしれないし、親が自分で自分の旅行をある程度はマネジメントできれば、親の旅行のサポートもさほどストレスにはならない。…が、私の親はどちらも持ち合わせていないので、私にとっては地獄の滞在になる。

親に何か酷いことを言って罪悪感にかられるのも嫌だし、何か上手く行かないことがあれば「親の期待に応えられないダメな子」として自分を責めるのは分かっている。これは子どものころから植え付けられてきたことだ。

自分の子供を見るだけで精一杯かもしれない私の生活に、両親の滞在やおもてなし、親の孫への関わりが加わったら、絶対にストレスで発狂する。それに、子供に何かされないか、私が子供に何かしてしまわないかと考えると不安だ。

親だからとか関係なく、英語が話せない・現地で何もできない大人は子供と一緒なので、仲の良い家族や友人でも遊びに来てくれた時にどんな対応をするかはそれぞれ違う。英語ができる、現地でも自分で自由に行動できる大人であれば、現地で受け入れる側の負担は相当減るので、大きな心配はせずに快く迎え入れることができる。

自分が何もできないことを自覚し無理な要求はしないとか、こちらの都合も考えてくれたり、金銭的にはこちらの負担を減らす配慮があったりすれば、対応は変わってくるとは思う。中には何でも受け入れてもてなしてくれる人もいるかもしれないが、私はそうじゃない。

まあ、もし親が滞在費を出してくれたとしても親と何日も一緒にはいられないので、結局はどういう関係で付き合ってきたかと相手の人間性による、としか言えない。

…お願いだから、私を頼って来ないでくれ。