最近、私はもしかしたら欲深い人間なのかもしれない、と思うようになった。
今まで、自分は真逆のタイプだと思っていた。基本的に余計なことはしたくないし、余計なものはなるべく買わない。生い立ちの影響もあって自分にお金をかけてあげることができない性分だし、私の周りにいる家族や友人と比べても、質素に生活している方だと思う。
でも、この「生い立ちの影響」があるからこそなのかもしれないが、本気で手に入れたいと思ったものにはストイックになっていた。
その1番の原動力は「これはやりたくない、これが嫌だ」という不満や怒りだ、ということには前から気がついていたが、欲はあるけれどそんなに強い欲ではないと思っていた。自分の強い欲の存在は強い不満や怒りに隠れてしまっていて、気が付きにくかったのかもしれない。
考えてみれば、たぶん小さい頃から欲深かった。
子供の頃から強烈に欲しかったものは親からの愛だったけれど、姉弟の中で1番愛情をかけてもらえなかった。母との相性が悪く、可愛くないし扱いにくい子だったのだろう。
姉や弟に与えられる物や経験など、同等に与えられないことが嫌で仕方なかった。
何が一番我慢がならなかったのかというと、他の姉弟と同等のお金をかけて、何らかの経験をする機会を与えられなかったことだ。同等の愛情をかけてもらえないのは、相性もあるだろうし仕方がないとも思える。しかし、生活に必要な物や、教育にかけるお金にまで差をつけられたことが許せなかった。
与えてもらえないならどんな方法を使っても手に入れると、悪いこともした。少しでも自分の欲を満たすために。やってはいけないことだとわかっていても、止められなかった。
1番欲しかった親の愛は手に入らない。だから子供の頃はお菓子や気に入った文房具など、手軽に欲を満たせるものを手に入れて誤魔化していた。そして、手軽なもので誤魔化していた欲は、大人になるにつれて誤魔化せなくなっていった。
それが苦しくて、次に誤魔化せる対象として自分の容姿や能力を高め、生活の質を上げようという方向に動くようになった。「親から与えられなくても、他の姉弟と違って優秀だから自分で手に入れてやる!」と、妬みによって歪んだ形で 笑
これができるようになれば、親の役に立てる、親にとって良い娘になれる、そうすれば他の姉弟みたいに大切に扱ってもらえるかもしれない、という期待が心のどこかにあった。また、親の愛を求める一方で、親・姉弟から離れてこの苦しみから脱したい、もう逃げたいとも思っていた。日本を離れて海外で暮らしてみたいと思っていたのは、この辛い環境から離れて生きてみたかったからだ。
結局、どんなに頑張っても、私が求めていた親の愛は手に入らないことがわかって絶望したけれど、このプロセスは私に必要だった。
もし親から愛されて育っていたら、ここまで強烈な欲に突き動かされることもなかったかもしれない。突き動かされて動いた結果、国際結婚してイギリスに住むことになったけれど、ここまで逃げても完全に親・姉弟とは縁を切れなくて時々胸が痛む。
夫とかわいい娘との生活は、今までで一番幸せだ。
ありがたいことだが、今までのような不満や怒り、強い欲に突き動かされることがないので、幸せすぎて逆にこれでいいのかと不安になる。こうなってようやく、今までの自分が欲深い人間だったと気がついたのだ。また、それは怒りや不満でドロドロしていて、サラッとした欲ではなかった。
今でも親から連絡がある度に心がざわついて苦しいし、親に何か言われた後は怒りが湧いて、また自分を追いたてて何かをしなければいけないような気持ちになる。昔に引き戻されて、心が休まらない。
でも、自分の家族である夫と娘のおかげで、何かに追われて「これをやらなきゃ死ぬ!」というような切羽詰まった衝動に駆られて動くことは無くなった。今までは怒りや不満と欲を原動力に突き動かされて生きてきたので、今の幸せな状態で今までと同じような頑張りはできない気がしている。
今は、今までのような欲とはちょっと違う、サラッとした欲のような気がする。
今もそれなりに欲しい物ややりたいことはある。前のように怒りや不満でドロドロした欲ではないけれど、今の幸せな生活でもちょっとした欲は出てくるのだから、いつまで経っても満足することはないのかもしれない。
自分の中に燻っている欲は、何となく感じているが、まだハッキリは掴めていない。
何だか前とは違うから、まだ上手く言語化できないし、掴めるまでもう少し時間がかかるかもしれない。
これから自分がどう変化していくか楽しみではあるけれど、親から連絡があると心がざわつくので、それに対しては良い対処法がないか探らないといけないな…さっぱり縁を切れたらいいのだけれど、これは難しい。
不満や怒り、欲は大きな原動力になる。今までで一番幸せな今、この大きな原動力に頼ることはできないけれど、また違った感じで何か新しい行動に移せるだろうか。
子育ては楽しいけれど、やはり自分の為にも何かしたいなと思う。