30代後半で妊娠を希望する場合、自然妊娠は確率が低く難しいとか、6か月トライして自然妊娠しなければ不妊治療した方が良いなどと聞くことが多い。
もし友人や家族などに話そうものなら、「もう若くない」「不妊」「難しい」「流産の可能性」といったキーワードを並べられたうえで、妊娠できなかったら遅くならないうちに早く病院に行った方が良いよ、頑張ってねと締めくくられて終わる。
このように話したことを後悔し、自分の加齢を呪うことになる可能性は低くない。
なぜそんなに不安にさせる?…35歳を過ぎたら、不妊治療前提に考えないとダメなのだろうか?
目次
35歳以上の妊娠はどれだけ難しいのだろうか
30代後半~40代前半でも妊娠・出産している友人や親戚もおり、彼らからは妊娠までに相当苦労したという話は聞かなかったが、私と同年代で妊娠するまでに1年かかったとか、1年以上トライしているけれど妊娠に至らないという友人もいるので、個人差はあるが加齢によって妊娠しにくくなるという現実は受け入れるべきなのだろう。
しかし、不妊治療も視野に入れて覚悟して取り組んだ方が良いと言われるほど、30代後半では妊娠・出産が難しいのだろうか。
日本語でGoogle検索すると、30代後半での妊娠は相当難しいと感じるような情報が沢山出てくる。私はネットから無料で簡単に手に入る情報には疑ってかかる癖がついているせいか、必要のない人にも不妊治療を受けてもらえるようにといった洗脳が、ネット上に溢れているような感じもしてしまう。加齢によって妊娠しにくくなるのは事実だし、間に合わなくなる前に不妊治療に踏み切ることも大切なのはわかるのだが、もう少し30代後半でも前向きに取り組める情報があってもいいじゃないかと思う。
そこで、ネットよりはその分野でのプロによって書かれた書籍の方が情報量も多く信憑性があるだろうという考えにより、上記のような疑問を解決してくれそうな妊娠についての書籍を探した。しかし、妊娠・出産の基礎知識に関する本や不妊治療の本は多いが、上記のようなテーマで多くを語ってくれる書籍は少ない。
そんな中で見つけた、英語で書かれた「The Impatient Woman’s Guide to Getting Pregnant」という本は、30代後半~40代で妊娠を希望する人にとって有益な情報が多く参考になった。The Impatient Womanとはまさしく私のことで、手に取らずにはいられなかった。
いや、本当に私は待てないし我慢できない。早期妊娠検査薬が使えるまでの2週間は苦行で、妊娠検査薬のフライングをしようか…と考えていたはずなのに気が付いたら既に使っていたり、陰性の結果が間違っている気がする、ともう一度使ってみたりしてしまう。
さて、そんなわけでこの本を参考に今回は私がネット検索で感じた、35歳以上の妊娠はそんなに難しいのか?という疑問について考えていきたい。
Google検索で上位表示されるページを調べてみる
2020年11月現在のGoogle検索で5位以内の上位表示された中で、キーワードに合った検索結果であり、かつ文章がコピペ可能で引用できるページを引用した。また、引用したページは、参照元がリンクになっている。
30代後半の妊娠確率はどのくらい?
「妊娠」「年齢別」「確率」「35歳以上」等のキーワードで、Google検索をかけると以下のページが上位に来る。
30代後半の妊娠率は約30%
president women 「30代後半で妊娠できる確率はどのくらいか」
健康な30歳の女性が性交渉をもった場合、妊娠する確率はひと月(1月経周期、1周期は平均28日前後)で約20%です。これは、健康な30歳の女性100人が妊娠を目的に性交渉を持った場合、うち20人が妊娠に至り、80人が妊娠に至らない、ということを指します。ちなみに、20代ではこの確率が約25~20%、30代前半では約20~15%、30代後半では約10%、40歳になると5%以下になります。健康な40歳の女性が性交渉を持った場合、100人のうち、妊娠に至るのは5人未満。残りの95人は妊娠に至らない、ということになります。
日経DUAL「30歳が1カ月で妊娠できる確率は20%、40歳で5%」
30代後半は30%?一月で考えると10%?…マジですか?
一月では10%っは相当低い気がするが、数字を使って説明されていることもあり、専門家が言っているらしいからもっともらしく聞こえる。
35歳以上で妊娠にかかる期間はどれくらい?
さて、他にも調べてみよう。妊娠できる確率とともに気になるのは、どのくらいの期間で妊娠に至るかどうか、ということではないだろうか。次は「35歳以上」「30代後半」「妊娠までにかかる期間」などでGoogle検索してみる。
年齢とともに自然妊娠率は下がり、特に35歳以上では妊娠までに13ヵ月から17ヵ月程度かかっています。35歳以上の妊娠できる力は20代の半分と言われ、卵巣や卵子、子宮の機能が低下するため、個人差はあるものの年齢が5歳上がるごとに妊娠率は確実に低下します。
妊娠・出産の正しい知識「妊娠するまでにかかった期間」
さらに、女性が35歳以上の場合、パートナーの男性年齢にも影響を受けていることがわかってきました。男性の老化は女性ほど大きくないものの女性の年齢が高くなると影響が出てくると考えられています。
30代の平均的な妊活期間は、
・30代前半で約38ヶ月(3年2ヶ月)〜42ヶ月(3年6ヶ月)
・30代後半で約36ヶ月(3年)
ほどだと言えます。
ほけんROOM医療保険「妊活期間の平均はどれくらい?30代の出産年齢や子供を妊娠する方法を紹介」より抜粋
このような検索ワードで調べてみても、35歳以上だから妊娠は難しく、不妊治療することを前提とした情報も多いので、それを鵜呑みにすると妊活する前から精神面では絶望的になってしまう。
特に2つ目の例は酷い。医療保険のサイトだからと言って、妊活についての記事なのに監修者がファイナンシャルプランナーで提示している数字も事実とかけ離れている。30代の平均的な妊活期間が3年以上のわけがない。何をどうやったらこんな嘘がつけるのか聞いてみたいものだが、これが上記キーワードでの検索結果の上位に来るのだから、Google検索で情報収集するのは気を付けなければならない。
一部のウェブサイトに関しては信憑性がなさ過ぎて笑ってしまうが、上記のような検索結果を見て35歳以上の妊娠は難しいのだという刷り込みが行われている気がする。
加齢によって妊娠しにくくなることや、流産率や染色体異常のリスクも上がることなどは確かに知っておくべきだとは思うが、必要以上に35歳以上の妊娠は難しいと植え付けるような情報はどうかとは思う。
実際は、そこまで難しいことではないのでは?
前出の本はアメリカで生活する著者が書いたものだが、英語でも同じような情報をよく見かけるらしい。
内容としては「多くの書籍やウェブサイトでは、35歳以下の女性がひと月で妊娠する確率は20%と言われており、35歳以上になるとその確率は5~10%となる。」という先ほどの1つ目の検索結果と同じようなものや、「30歳の女性が妊娠するまでにかかる期間の平均は約7か月」だというものがあると、本の中で紹介されている。
しかし、公的機関の調査では20代後半~30代前半の女性が週に少なくとも2回の性行為をしていた場合、妊娠するのは平均で3か月以内、35歳から39歳においては平均で4か月だったそうだ。アメリカの公的機関の調査ではあるが、日本でもこちらの方が現実に近い数値の可能性もある。
また、20代後半~30代前半の女性が排卵日2日前に性行為を行った場合の妊娠率は35%という調査結果もあり、多くの書籍やウェブサイトで言われていることが必ずしも正しいわけではないことが分かる。
「多くの書籍やウェブサイトでは、35歳以下の女性がひと月で妊娠する確率は20%と言われており、35歳以上になるとその確率は5~10%となる。」というのは、Google検索で見た上記の引用先と同じような内容なので、もしかしたら少し古い情報か現実に即していないがよく使われるものとして、同じエビデンスを参考に語られているものなのかもしれない。
面白かったのは、「35歳の女性が避妊無しでの性行為を一年続け、子どもが授かれるのは3人中2人」というもので、これによって残りの1人は不妊となるとよく言われているのは、フランスの教会が管理していた1670年から1830年の出生証明書を根拠として語っているというものだった。他にも35歳から39歳までの年齢から妊活を始めた女性の中で一生子供がもてないのは約30%というもので、これは350年前の出生記録を元にしたものだったそうだ。
引用されているエビデンスが古いもののまま、書籍やネット上で語られていることも多いことに気が付いた著者は、なるべく最近の調査結果を集めて書籍で紹介してくれている。因みにこの書籍の出版は2012年、私が手にしたものはアップデート版2016年の物で、紹介されている調査結果の多くは2000年代以降だ。
昔とは平均寿命も違えば、平均の出産人数だって違う。昔と違い今は十分な栄養も取れるし、危険があれば病院で適切な処置も受けられる、排卵検査薬を使えば個人が手軽に排卵日を知りタイミングを計ることも可能な上に、必要となれば不妊治療も受けられる。そういった今のような時代ならば、数百年、場合によっては数十年前の調査結果でさえも、参考にならない可能性もあると言われれば、確かにそうだよなとも思う。
35歳以上で妊娠を望む人に嬉しいデータを紹介
2013年に約3000人を対象にヨーロッパで行われた調査結果によると、35歳から40歳までの女性の78%が、排卵期での性行為によって1年以内に妊娠している。
また、2002年の別の調査では、35歳から39歳までの女性の50%が3か月後には妊娠し、82%が1以内に妊娠、そして1年以内に妊娠しなかったとしても2年目のトライで90%の女性が自然妊娠に至ったそうだ。
前の段落で、「20代後半~30代前半の女性が、排卵日2日前に性行為を行った場合の妊娠率は35%」という調査結果を紹介したが、35歳から39歳の女性の場合でも排卵日2日前に性行為を行った場合の妊娠率は25%もあるそうだ。この25%という数字は、19歳から26歳までの女性が排卵日3日前に性行為を行った場合に妊娠する確率と同じなのだが、こういった調査結果を見ても35歳以上の妊娠は難しいと感じるだろうか。
25%、四分の一の確率は決して低くない。
19歳から26歳までの女性が排卵日2日前に性行為を行った場合に妊娠する確率は50%ほどらしいので、同じ排卵日二日前を比べた場合には約半分の確率にはなるが、25%もあるのであれば上記のように35歳~39歳の女性でも1年以内に78%は妊娠に至ったという結果にも頷ける。
年齢によって妊娠しやすさや流産してしまう確率、染色体異常のリスクは確かに変わってくるが、身体的な不妊原因がない限り、自然妊娠には「タイミングが全て」なのだそうだ。
私も恐らくそうなのではないかと思う。妊娠しやすいはずの若い女性であろうと、妊娠しにくいと言われる35歳以上の女性であろうと、タイミングが悪ければ妊娠に至らないだろう。このままその「タイミング」について述べられた興味深いものも紹介したいが、長くなったのでやる気になったら別でまとめたい。
妊娠するかは「タイミングが全て」
30代後半でも妊娠はできるが、加齢によって妊娠しにくいという事実はある。流産や染色体異常のリスクについては、その可能性があるということは受け入れて心の準備をしておくしかなく、もう運としか言いようがないと思っているので心配しても無駄だと考えている。
加齢によって妊娠しにくいのは事実だが、「タイミングが全て」と言われるほど重要なこの「タイミング」をつかみ妊娠に至るための工夫はできる。年を重ねている分、調査力・思考力・人によっては資金力もあるのだということを忘れてはならない!ということで、前向きに調べまくってタイミングを計ることにする。
「調べる」というのは、もちろんネットや書籍などで手に入る「妊活の基礎知識」と言われることも大切だが、タイミングが全てという視点で考えれば、何よりも「自分の体を知る」ということが大事になってくる。
年齢相応に長い事自分の体と付き合っているので、生理に関する自分の体のデータも多いはずだし、おりものの変化、月経周期、排卵日をまずは徹底的に調べる必要がある。自分の体のサイクル・状態が分かっていなければ上手くタイミングを計ることは難しいので、長期間ストレスにさらされながら無駄に頑張ることになる可能性が高い。これは、35歳以上で時間のない女性にとっては大きな問題だ。私のような30代後半のImpatient womanならば、1周期たりとも無駄にしたくないと考える。
自分の体を知る重要性については、以下を考えてみても分かる。
例えばネットや書籍で手に入る情報でよく見かけるのは、女性の平均的な排卵日は月経の約14日前というものだが、これは平均なので個人差がある。多くの女性の排卵日は月経の約12~16日前なので、平均の14日前を目安にしていたけれど自分の排卵日をちゃんと調べてみたらタイミングがずれていた、ということもある。
性行為の回数を増やせばカバーできる問題ではあるかもしれないし、タイミングが全てなので運もあるとは思うが、排卵日だろうと思われる日を基準にしてタイミングを計っているのだから、自分が基準にしている日がズレていたら妊娠可能性は下がるだろう。年齢に関わらず、たった一日狙っていた日がズレただけでも妊娠率は下がるのに、ただでさえ妊娠しにくい35歳以上の女性ならば1日のズレ、卵子の授精可能時間を考えると数時間のズレでも妊娠に至らない可能性は高い。
子どもが欲しいと思ったら直ぐに、自分の月経サイクルのチェックのために基礎体温を付けてみたり、排卵検査薬を使ってみたりと、自分の体を知るための行動をすることが重要なのではないだろうか。また、そういった自分の体を知る過程で、排卵などに問題がありそうだと早い段階で気が付くことができれば、躊躇することなく、無駄な時間も取られずに不妊治療に着手することも出来るだろう。
ここまでしなくても35歳以上でもアッサリ妊娠できる人はいるだろうし、タイミングを計って修正して、また挑戦して…と長期戦になる人もいる。タイミングが上手くとれるかは運だよなとは思うが、私のようなImpatient womanは避妊を止めるときに徹底的に調べて、結果や気が付いたことに一喜一憂して楽しんでしまうんだよなぁ。
検索キーワード「妊活」、予測変換は「つらい」
最初に目にしたときは笑ってしまったが、「妊活」と入力したら「つらい」って言うキーワードも予測で出てきたりする。妊活で精神的に辛くなる女性は少なくないのだろう。自分の努力だけでは何ともならず、加齢を戻して若返ることも出来ない、自分のコントロール外なので結果が付いてこないと頑張れば頑張るほど辛くなる。
長期戦になればなるほど精神的に参ってくるけど、デリケートな問題だから気軽に相談もできないというのも、つらい。「つらい」というキーワードとともに思い浮かぶ「妊活」っていう言葉は、便利だけれど好きになれないなあ。
ネガティブな情報に溢れているネット検索には気を付けないといけない。…かといってポジティブな「妊娠しました」「妊娠検査薬 陽性」という情報でも、自分の状況によっては希望を感じるどころか絶望的な気分になることもある。
私のように我慢できない人間は、妊活というストレスと戦うには弱すぎるので、「35歳以上でも妊娠できるよ、バッチリタイミングとれれば大丈夫だよ」といった情報がもっと見たいのだ。個人の体験談も参考にはなるが、精神的に参っているときは、調査結果を元にした希望が持てて自分の妊活に参考にできそうな情報を得るようにしよう。