イギリスで絹の着物を自分で洗う

イギリスで絹の着物を自分で洗う

着物を頻繁に着るのであれば、自分で洗いたいと思うのは自然な流れだろう。

私の場合、着物を汚れたままにしておくわけにはいかない、はっきりした理由がある。いくら普段から着物をよく着ると言っても、私のクローゼットがある寝室は湿気が多くカビ対策が必須なので、着物にだってカビが生えやすいはずだからだ。

移住してたった数か月で、既に何着か洋服にカビが生えてしまっているのを発見して発狂した 笑

絹の着物は自分で洗わない方が良いとはよく聞くが、私が住むイギリスでは着物をクリーニングに出すことも出来ないので、自力でやるしかない。どうやるかを色々調べてみても、イギリスで着物を洗う情報は出てこないので、結局は自分で試していくしかないのだが、失敗することもあるだろうと覚悟はしても、中古で安く手に入れた着物でも着れない状態になるのは悲しい。

ダメもとで試してみようと、腹をくくるのに時間がかかった。

調べていくうちに、お洒落着洗い用の中性洗剤で手洗いをし、半乾きの状態で当て布ありで低温アイロンかければいけるんじゃね?と思い、更に気になったのは…ここで手に入るもので、使用する洗剤は何が良いか?私の住む地域は硬水だが、影響はあるだろうか?ここの洗濯機は日本のものと違って途中で止められないので、脱水だけ利用するにしても危険ではないだろうか?…ということだろうか。

悩みつつ、色々試してみた。

一枚は救い様がない状態でもう着れないし、気に入ってよく着ていた紫の銘仙は色落ちが激しくて白の部分がピンクになった。袷の着物でも気を付けて洗って乾かし、上手いことアイロンをかけて仕上げれば大丈夫なものもあった。

自力で洗う時点で、アウトな着物もあるだろう。さすがに縮緬やお召を洗う勇気はないし、古い着物は特にだが赤系は色落ちが激しくて難しい。

…結局何が良いかは、その着物による。

大きな失敗をしてからは、調べて試した通り「単衣」の着物で平織の紬とかなら自分で洗っても問題はなく、ここイギリスで普段着として着物を着るなら、そういった自力でも洗える着物をメインに着ていくしかないだろう、と結論付けた。

絹ではなく木綿の着物メインで普段着にすればいいのだろうけれど、木綿の着物は持っていないので、手持ちの絹の着物を暫くは大事に着ていこうと思う。そのうち欲しいな、木綿着物!

イギリスで着物を自分で洗う方法

着物がダメになっても自己責任で私が洗っている方法を紹介しておく。

1、バスタブにたたんだ着物が十分に浸るくらいのぬるま湯をためて、硬水を軟水に変える「laundry water softening powder」を投入する。量は適当。

2、着物を入れる前に、汚れが酷いところには使用する洗剤をちょっと薄めてつけて、汚れを落としておく。擦らずに叩いて落とす感じ。

3、着物をたたんだままの状態で、ぬるま湯に浸す。着物の中までしっかり浸っているか確認。

4、シルクも洗える中性洗剤(私が使っているのは ECOVER delicate detergent wool & silk laundry)を若干少なめに投入してよく混ぜる。

5、着物だたみのまま手洗いする。擦らないように緩めに押し洗いするが、着物によっては軽く擦って洗っちゃう。

6、バスタブの淵に着物をかけて水切りしつつ、使用したぬるま湯は流し、新たにぬるま湯を投入してすすぐ。ここでも着物は擦らずに押す感じ。すすぎは約3回。

7、擦ったりはせずに水切りをしたら、なるべく小さくたたんで形が崩れないサイズの洗濯用のネットに入れる。

8、洗濯機に入れて、設定はspin onlyで回転数を一番少なくして脱水にかける。(イギリスの洗濯機は途中で止める・開けることができないので、繊細な着物なら洗濯機は使用しない)

9、着物用ハンガーもしくはClothes lineを室内に設置して干す。しっかり着物の形を整えながら伸ばしておく。

10、着物が半乾きの状態で紬ならスチームなし、当て布も無しでアイロンをかける。低温だと仕上がりが微妙だったので、温度設定は高温にして、生地を縦にしっかり伸ばした状態でさっとかける。小紋の場合は低温で当て布あり、縦にしっかり張ってガッツリアイロン。

11、アイロンかけるとほぼ乾いているけれど、干しておく。2日くらい放置して終了。

最近は、ガッツリ洗いたくて色落ちの心配もなく、何だかいけそうな気がする着物であれば「liquid soapflakes」という液体の洗濯石鹸を使っている。白の絹の長襦袢は特に綺麗さっぱりになった。

これはpure soapとも書かれているだけあって、余計な成分一切なしのだたの液体洗濯石鹸。アトピーに悩まされてきた私には心強い味方で、日本にいるときはお洒落着もこれで洗う場合があったので、なんかいけそうな気がしたから使ってみた。安全策で中性洗剤、ものによってはこっちで使い分けている。

また、その着物を初めて洗うときは、見えない位置の生地に軽くぬるま湯を付け、色落ちしないかを確認してから洗った方が良い。

大丈夫そうだと着物全体を浸してみたら色落ちしてくることもあり、その時点で洗うのを断念する場合、直ぐに着物を優しく救出してバスタオルで水気を取り、上記同様形を整えて乾かせば何とかなることもある。

古い着物で赤みのあるもの(紫やオレンジなど)は特に色落ちすることが多い。少しくらい色落ち・色移りしても良いと覚悟を決めて、手早く洗っても失敗した例があるし、それならとガッツリ洗ってみても色落ちし続けるだけで終わりはないので、やるなら慎重に 笑

そして色落ちとともに気になるのが、着物が縮んでしまうことではないだろうか。

基本的に横幅はほとんど変わらないが、着物は縦に縮むので、縦方向にしっかり張ってアイロンをかけている。紬の縮みは気にならなかったが、小紋の着物は少し縮んだことがあった。そもそも生地の違いで仕方がないのか、洗剤かアイロンがけかその他が原因かは分からないので、小紋は特に慎重に洗っている。

袷の着物の場合、表地と裏地の伸縮率の違いが大きいと着れる状態ではなくなるので、基本的には袷の着物は自分で洗わない方がいいそうだ。だから私は袷を表地と裏地を解いて離し、それぞれ別にして洗った。

しかし、銘仙は袷でも洗って大丈夫なものもあるようだ。銘仙は仕事着としても着られており、自分で洗うのを前提に作られたものは袷でも洗えると聞いたので洗ってみたが、聞いた通り伸縮率の違いはほとんど気にならなかった。酷く色落ちはしたが 笑

縮みや手触りの変化を考えると、やっぱ自分で洗える絹の着物は紬だなと実感する。縮みや手触りが不安なら絹の小紋も自分で洗うのは避けた方が良いかもしれない。そもそも訪問着とか、素材で言えば縮緬とお召は自分で洗えるものじゃないと考えている。

あと着物を洗う際に気になるのは、ニオイだろうか。

着物を濡らすとキツイ臭いがすることが多いが、洗って乾かすと消えるので私は特に気にしていない。ただ、いつかは臭いが酷かったらナチュラルクリーニング・消臭効果で名高い重曹も試してみたいと思っている。実験は楽しいから。 

実験と言えば、今度は洗濯糊を使って仕上げてみようと画策中だ。仕上がりがどう変わるか試してみて、良さそうなら使っていこうと思っている。ここでは洗い張りをする道具もそろわないし、何より面倒くさがって続かなそうなので、自分で持続可能な方法を模索していくつもりだ。

着物を自分で洗うのを試していると、何となく大丈夫そうな気がすると分かってくる気がするが、いけるかもと攻めすぎて失敗することもあるので、程々にしないとなとは思う。

いくらダメもとでと思っていても、選択に失敗して着れなくなった着物を見るのは辛い。ダメにしてしまった着物を、何とか何らかの形で使えないかと考えているが、どうかなあ。