コロナウイルスの影響で世界が大きく変化し経済状況も悪化していく中で、失業する不安やお金が無くなる不安に襲われる人は少なくないだろう。
私はイギリスに移住して半年たたずにコロナウイルスのパンデミックになったこともあり、簡単には働けないだろうし、友人との出会いも難しくなってしまった。
コロナウイルスの影響がなければ、地域の語学クラスに通って英語を学んだり誰かと知り合ったりできたし、生活に慣れたらここで働く現実を知るために何らかのパートタイムの仕事でもできないかなあ…と思っていたが、今の状況ではこういった機会は得られないだろう。また、経済状況は悪化していくだろうから、きっと簡単に仕事が手に入ることはない。日本でずっとやってきた美容の仕事なら、ここでも個人でできる可能性もあるが、コロナの感染リスクもあるし仕事としてはもうやりたくないので選択肢には入らない。
本当に、コロナウイルスのパンデミックによる影響は、自力で頑張って何とかなるものではないなと思う。
自分の能力よりも自分の置かれている環境や社会の状況の方が、結果に対する影響は大きいということに気が付いてから、自力で何とかしようと頑張るのは止めた。自分の力ではどうにもならない状況の時は、無理に自力で何とかしようとしても何ともならないと少し前に気が付いたから。
ただ、こういった大きな変化がチャンスになることも多いはずなので、何らかの策があるのであれば動いた方が良いとは思う。
…しかし特に何にも思いつかないし、昔の私からしたら想定外だけれど夫との子どもが欲しくなったので、この機会にしばらくは働くことを諦めて大人しく毎日の生活を楽しむことにした。子どもが欲しいのであれば、私の年齢を考えると待ったなしで動いた方が良いからだ。
日々の生活を楽しむことにしたので、必然的に趣味が増える。和裁や読書も面白いのだが、お菓子作りでバターと砂糖をどこまで減らして美味しく作れるかの実験や、全粒粉を使ったお菓子でどこまで美味しく健康的な感じで作れるかの実験、イギリスで手に入る調味料と味噌・醤油をどう合わせると美味しい料理が作れるかの実験もなかなか面白く、日本にいた時よりも料理を楽しんでいる。
お菓子作りや料理は自分が楽しいだけでなく、夫も喜ぶ。私の機嫌を損ねない為か何でも美味しいと言って食べるが、気に入ったものが余っていたら毎日のランチに勝手に持っていくので分かりやすい。ランチに持っていきやすいオートミールクッキーとバナナパウンドケーキ、照り焼きチキンサンド、オリジナルの卵サンドあたりは頻繁に作っている。
そして最近、こういったライフワークに加わったのは、ティンホイッスルの練習だ。
何か楽器やりたいなと思ったので、とりあえず試しにやってみようと思い一番安いやつをAmazonで適当に買ったら、ティンホイッスルのD菅だった。高音でピーピー吹いているので近所の迷惑になるかも…と思いつつ、毎日吹いている。残念ながらまだ「奏でる」とは言えない状態だが、これもなかなか楽しい。
考えてみれば日本で働いていた時は、家帰って読書して、副業して、時期によっては放送大学の学習して…と、今思うと毎日の生活を楽しんでいた感じがなかった。1人でも生きていけるようにと、生き延びるために必死で働いて学んでいたから。
食事を作る時、美味しいものを作って食べたいと思う気持ちはあっても、手軽に食べられて健康的で、そこそこ美味しいといったレシピを選んでいただけで、作業的に料理をこなしていた。今やっているようなちょっとした違いを楽しんだり、失敗してもいいやと試してみたりする余裕は全くなかった。
また、子どもの頃のように下手でも楽しんで楽器の演奏がしてみたいと思っても「やる」までにはいかずに、やりたいなと思っているだけだった。着物を着たいというのもそれで、実際に「着る」まで行くのに数年かかったし、「着る」に至ったのは幸か不幸かイギリスのビザ申請の結果待ちが長引き、暇ができたからだった。
こう考えると、やってみたいと何となく思っていたことを「やる」には、自分にいくらかの余裕が必要なのだろう。生活がかかっているからと必死で働いていたり、収入が途絶えることを心配していた時には出来なかったことだ。
貧困に陥らないかビクビクしながら、休みも少なく日本で働いていた時が必死すぎて、こうやって何かを楽しむことをすっかり忘れていた。居心地のいい家で、美味しいもの食べて、一緒にいて心地が良い人と暮らす、こういう人間というサルらしい生き方がしたかったのかもしれない。
自分でいくらかの収入を得たい気持ちはあるが、今の状況では何ともならないので夫と夫の家族に頼りきりだ。でもコロナの影響は自分ではどうにもできないし、夫も幸せそうにしているからいいかと思えるまで時間がかかった。とりあえず、コロナの影響がある中でも夫と生き延びられればいいか、と。
こういう時につくづく思うのが、一人で生きていくってすごく大変だよなということ。
まさしく私がずっと一人で生きていけるようにと頑張り続けていた人間だから、数年前にその考えを改めなかったら今の状況は、相当苦しかったかもしれない。追い詰められて死まで考えていたかもしれない。
頼れる人が増えればより自立するという考え方に出会って、受け入れて、変化して良かったなと思う。頼れる人はまだ少ないし自分もまだまだ成長していく必要があるので、自立とは程遠いけれど、何となくわかってきた気がする。
さて、先日失敗したラーメンのスープを改良しよう。自力で何とかできる状況じゃないから、日々の生活でやりたいことをやって楽しむしかない。