先週から、自宅すぐそばにあるGP(General Practitioner/家庭医又はかかりつけ医)が騒がしくなった。
ロックダウン中なのにも関わらずGPの入り口には車の案内員が常に2人以上、GPの隣にある有料駐車場にも案内員が2人いる状態で、周辺は混みあっている。来ている人たちを観察していると、高齢者ばかりだった。
どうやら、このGPでコロナウイルスのワクチン接種が始まったらしい。
イギリスで一度目のワクチン接種を済ませた人は、昨日の発表では約460万人だ。最近は一日に30万件以上のワクチン接種が行われており、PCR検査と言いワクチン接種と言い、目標を決めて「これをやる!」と決めた後のイギリス政府の実行力はすごいと思わざるおえない。これだけ感染が拡大して被害を被っているのだから当然かもしれないが。
因みにイギリスのPCR検査能力は現在一日約80万件で、最近の検査実施数は一日約60万件ほど。第一波の時に検査数が少ないと散々問題になってから、検査能力の拡充に努めここまでやっている。イギリスで変異種が発見されたのも、この検査能力があったからこそなのではないかなとも思っている。
これだけ感染拡大し死者も出しているイギリスのコロナ対応は失敗と言わざるおえないだろうが、個人がする感染対策にはある程度その国民性も関係しているだろうし、すべてが政府の対応のせいとも言えない気がしている。マスクの使用などの普段の衛生面、旅行への執着心や、クリスマスの過ごし方とか、まあいろんな人がいるなと思ったものだった。
さて、上記の自宅そばのGPは、近いのだから当然私が登録しているGPだ。
妊娠してからお世話になるかなと思っていたけれど、検診で案内されたGPは家から車で5~10分ほどの距離にあるGPだったので、なんでかなぁ…と思っていたがワクチン接種が始まり、ああそういうことだったのかと納得した。
イギリスでこれだけコロナウイルスの感染が拡大する中、GPでの妊婦検診について記録しておこうと思う。
妊娠が判明したらすぐにGPに連絡する必要があるが、10週になるまで基本的には放置である。これには驚いたがこの時期の流産は防ぎようがないし、何かあったらすぐ対応すればOKという考えもまあ理解はできる。
コロナがなければ妊娠判明後すぐにGPに行って登録となるようだが、そのための予約の電話で案内された地域の妊婦登録用のウェブサイトに登録するように言われただけで、10週ごろになってやっとmidwifeとの最初の面談の連絡がきた。何度も言いたくなるが、それまでは放置である。
コロナの影響もあり、この面談は一人で行かなければならなそうだったので、自分の英語力に心配もあり夫とともに受けたいとお願いし、電話での対応にしてもらった。飲酒・タバコだけでなくドラッグの使用経験、交通事故に遭ったことはあるかだけでなく馬から落ちた経験はあるかなど、日本では聞かれないようなことを聞かれて面白いなと思った。
そして電話面談の数日後に、GPで血液検査、尿検査、血圧測定を受けることになった。電話でなければ、面談とともにこれらの検査を受けることになったのだろう。
その検査を受けるために案内された施設は、GPではなくGPが管理する何かの施設だった。行って驚いたのは、着いてキョロキョロしていたら親切に声をかけて案内してくれた人がいただけで、担当のmidwife以外の人と同じ空間にいることが全く無かったことだ。施設内ではマスクは必ず着用、エレベーターの使用も一人ずつに制限、出入り口・エレベーター内・トイレ・通路の至る所に消毒液。
妊婦はコロナの感染リスクも重症化リスクも高いと言われているが、ここまで徹底して人と会わずに過ごせるとは思わなかった。そりゃワクチン接種に大量の人が出入りする近所のGPでは、妊婦は受け入れられないわけだ。
尿検査は待合の椅子の側に置いてあった大きめの採尿ボトルに直で入れなければならず、採尿カップとかないんだ…絶対に自分の手が汚れるやつじゃんと思いながら済まし、私の苦手な血液検査は4本分取られ、血圧は問題なく測定された。夫との馴れ初めやら、イギリスに来てどれくらいかとか、コロナで大変とか世間話をしながら。
次のmidwifeによる検診は16週ごろと言われたが、予約は17週で結構アバウトなようだ。その前に10~14週で最初のエコー検診があるが、これも13週でちょっと遅めである。それまで赤ちゃんの状態を確認できないので、流産しないか、赤ちゃんが無事に育っているかの不安がずっとつきまとう。やっと見れる!と思ったら稽留流産でした、とか悲しすぎるので心の準備はしておいた方が良いかもしれない。
日本では頻繁に赤ちゃんの状態を目で確認できるが、イギリスのNHSではエコー検査は10~14週に1回目、18~22週に2回目の2回のみで必要最低限しかやらない。無料なので必要最低限になるのも分からなくもないし、コロナの感染リスクを考えればまあいいかと思っている。どうしても確認したければプライベート診療で見てもらえばいい。
因みにマタニティクラスのようなものは、コロナのせいですべてキャンセルとなっている。パンデミックの中で妊娠を希望したのだからもちろん予想はしていたが、すべてが初めてのことなのに孤独に学ばねばならないので不安だ。
まだ救いなのは、2回のエコー検査と出産には夫が立ち会えることだろうか。
少し前まで、エコー検査に夫などのパートナーの付き添いは許可されておらず、一人で悲しい結果に向き合い、自分の口でパートナーに報告しなければならない辛さを訴えるニュース記事が出ていた。その配慮はなされたようで、感染状況や地域にもよるのかもしれないが今はエコー検査と出産の立ち合いは1人だけ許可されている。
これもコロナの影響でいつ変更されるか分からないし不安は尽きないが、私がどうこうできる事でもないのでそれなりに対応していくしかない。最近思うのは、感染リスクの少ない田舎でよかった~ということだろうか。
今までのロックダウンのタイミングも、田舎だからこそ早めの対応となり大都市ほどの感染拡大はしていない。ロンドンとか人の多い場所で生活していたら、感染への恐怖はもっとあっただろうと思う。
妊婦はコロナのワクチン接種は推奨されていないので、私がワクチンを接種するのはまだまだ先だろう。妊娠に関わらず接種したいかと言われれば正直微妙だけれど、イギリスの感染拡大は少しでも抑えられて欲しいから、こうやってワクチンの接種が進んでいるのはありがたい事なのだろうな。