親との親子関係で傷ついた心を、子供との親子関係で癒す

親との親子関係で傷ついた心を、子供との親子関係で癒す

30/10/2025

親子関係は難しい。

子供と向き合う時、自分が母とどんな親子関係であったかを振り返って考えることが多く、親子関係についての本をよく読んでいる。特に私は母と娘の関係について書かれた本を読むのだが、自分の母娘関係と向き合う事だけでなく、子どもを持つか持たないかの生き方についても考えさせられる。

母との関係に悩んだ人は、子どもを持たない選択をする人も少なくないように感じる。

母親の支配が強すぎて自分のことまで手が回らず、やっと親が死んだ時自分は60代になっていたという人もいれば、虐待の連鎖を断ち切りたくて子どもを持たない選択をする人、母親の支配から逃れるのに必死で向き合っている間に婚期を逃したり、出産可能年齢を過ぎてしまった人もいるかもしれない。

私も母との関係に悩み、10代・20代の頃は生涯独身で過ごすと決めていた。20代の頃から親とは距離を置くようになり、考え方や親との関わり方を変えたことで、30代になってようやく「せめて生涯を共に過ごすパートナーは欲しい」と思うようになった。当時は「結婚出来たらラッキー、子供を持てたら奇跡」と思っていたが、運よく夫と出会い子供にも恵まれ私は奇跡を起こした。

私は親との関係に悩んだこともあり、パートナーは欲しいとは思ってはいたけれど子供が欲しいと思ったことはなかった。子供が欲しいと思ったきっかけは、夫と結婚して迎えた最初の結婚記念日で、毎年の結婚記念日を記録するアルバムを夫がプレゼントしてくれた時、ふと夫が「いつか、どちらかがこれを一人で書く日が来るんだよね」と言ったことだった。その時を想像し、2人して泣いた。子供を望んだのは、もし私が死んだら夫は一人になるというのを想像した時、夫の側に誰かいて欲しいと思ったからである。夫の側に寄り添ってくれる、私達の子供が欲しい、と。

そうして、高齢妊娠・出産で娘を授かった。

上記のようなきっかけがあり子供を望んだが、子供がいて良かったと思うことは沢山ある。娘の存在は、確実に私を癒している。娘と関わる中で親との関係を思い出して苦しくなることはあるが、娘が私に向けてくれる真っすぐな愛情や信頼が、子供とか親とかそんな立場は関係なしに私という人間を包み込み、満たしてくれる。

親からはかけてもらえなかった愛情や培われてこなかった信頼は、もうどうにもならない。分かってはいても親から愛されたかったと思ってしまうから、親との関係を断ち切るのは難しい。しかし、子供の立場ではどうにもならなかった親との親子関係と、自分が親の立場で作り上げる子供との親子関係、この2つの親子関係があることで、もうどうにもならない親との親子関係から視線がそれる。

そして、自分の子供と向き合い自分の子供との親子関係を築いていくことに力を注ぐと、母との親子関係が改善されたわけではないのに、何故か癒されているのだ。親子関係で傷ついた心は、別の親子関係で癒すことができるのかもしれない。親子関係で傷ついた心は、親子関係でしか癒されないのかもしれない。よく分からない。

子育ては大変である。どの本の著者が言ったかは忘れてしまったが、「子供を育てることは、学びの学校に入学するようなもの。」「子育ては、人間が子供たちの信頼に応えようとすること。大人たちが、子供たちの信頼を失わないように努力すること。」といった言葉が印象に残っている。

子育ては大変だから、親との関係にウジウジしているのがもったいない。今でも苦しいけれど、親との関係が悪かったからこそ多くのことを学べたのだから、これから築いていく子供との親子関係に力を注いでいこうと思う。子供の信頼に応え、子供の信頼を失わないように努力することで、きっと私が学び成長するのだろう。これほど難しくて、やりがいのあることはない。

今心から思うのは、間に合ってよかった、ということである。まだ出産可能な年齢でパートナーが欲しいと気が付けて、行動に移すことができて良かった。運良く子供を持つ機会に恵まれて良かった。

親子関係に悩み、虐待の連鎖を避けるため等といろんな理由があって、若いころは子どもを持たない選択をしようと思っていた私に、どうにもならない親との親子関係で受けた傷を自分で築く子供との親子関係が癒す、という現象が起こったので心の底から驚いている。人生って何が起こるか分からないから面白いなと思う。