今年の4月に妊娠したとき、流産かと思いきや胞状奇胎という異常妊娠になってしまった。そして5月に子宮内容物除去手術を受け、8月に経過観察が終了。その記録をこのブログに残し、今は妊活をしているところである。
もうすぐ手術を受けてから24週が経過しようとしている。もうすぐで手術から半年。日本で胞状奇胎と診断された場合、最低でも半年は妊活が制限されることは調べて知っていた。日本とイギリスでは胞状奇胎の一次管理で適用される基準値が異なり、経過観察にちょっとした違いがあるお陰で3カ月と少しの経過観察で妊活解禁となったのだが、どの程度違うのだろう?と気になったので、ここで振り返ってみることにする。
胞状奇胎 日本とイギリスの経過観察の違い
hcg経過観察の基準値
胞状奇胎は、子宮内容物除去手術を受けた後、血液検査や尿検査でhcgの値を調べ、その下がり具合で経過観察の期間や追加の治療の有無などが決まる。条件を満たせなければ、追加の治療や経過観察の延長が案内されるのは、日本でもイギリスでも同じである。
日本の場合のhcg基準値は血液検査で手術後5週で1000 IU/L以下、手術後8週で100 IU/L以下、手術後24週でカットオフ(ほぼゼロ)となっている。基本的にはこの3度の基準値をクリアすれば経過観察が終了となる。
私が参考にさせてもらったいくつかのブログを見る限り、全胞状奇胎・部分胞状奇胎のどちらであっても、この基準値が適用されているようであった。
一方、イギリスでの基準値は、全胞状奇胎の場合は手術後56日(8週)以内にhcgが血液検査で5 IU/L未満・尿検査で25 IU/L未満である(部分胞状奇胎も同じ基準値が適用されるが、手術後の期間の指定は無し)。この基準値をクリアし、基準値以下になった1か月後に尿検査をして問題が無ければ経過観察が終了となる。
日本とイギリスのhcg基準値や手術法の違い
手術後8週は日本もイギリスも基準値が設定されているので、比べてみよう(日本には尿検査の基準値が設定されていないので、血液検査のみではあるが)。
日本は100 IU/L以下、イギリスでは5 IU/L未満。
hcgの数値が少なくなってきていても、このちょっとの数値が下がらない!!ということもあるので、手術後8週でこの数値は結構な差だと思う。
イギリスの厳しい数値をクリアすれば経過観察は約3カ月で終わるが、全胞状奇胎の場合は8週の時点でこの基準値を満たせなかった場合、基準値をクリアしてから更に6か月の経過観察となる。最短で3カ月、それ以外は9カ月以上の経過観察になるので、8週の検査結果は経過観察の期間に大きな影響を与えることになる。
手術前のhcg値が高かった場合、この基準値をクリアするのは難しいのかもしれない。
日本での胞状奇胎のブログをいくつも読み漁り経過を確認していくと、経過観察が長引いたり、侵入奇胎になったりしている人は、手術前の時点でhcgの値が高かったり(胞状奇胎の発見が遅くて手術を受けるのが遅れたなど)、一度の手術で奇胎を取り切れておらず再手術になったりしている人が多いように感じる。
そして日本では子宮内容物除去手術は掻爬法で行われていることが多く、2度の手術を受けている人も少なくなかった。
イギリスの場合は、基本的には吸引法の手術を一度だけである。吸引法の方がメリットが多いため、掻爬法は行われていないようである。吸引法の方が取りこぼしも少ないので、2度も手術をする必要は無いのだろう。
イギリスはNHSの利用となる為、医療費が無料である。何度も手術をしたり、期間が延びれば時間も手間もお金もかかるので、基本的に医療は必要なことだけやるといった感じである。手術後8週の時点でこれだけhcgが下がっていればほぼ問題なく、それ以上の経過観察は不要ということなのであろう。
早く妊活を再開したい!という人が少なくないと思うので、イギリスの最短3カ月という経過観察はありがたいけれど、条件が厳しいので下手すると最短でも経過観察終了まで約9カ月かかってしまうことになる。そして日本は、最短で6か月の経過観察。
どちらが良いかは自分の置かれた状況による。40代の私にとっては経過観察が3カ月で終わったことは不幸中の幸いであった。
日本とイギリスで受けられる医療や用いられている数値などに違いはあれど、胞状奇胎になった場合の対応は基本的には同じである。日本の方が医療にアクセスしやすく、フォローアップも手厚いので日本の方がいいとは思うが、イギリスで生きていくと決めた以上、これは仕方がない。
ただ一点、切実にイギリスでよかったと思うのが、産婦人科での経過観察ではなかったという点である。
日本で参考にさせてもらった多くのブログで、経過観察に通うのが産婦人科で辛かったという人が少なくなかった。そりゃあそうだよな、と思う。胞状奇胎になり、心から望んでいた子供を得るという結果が手に入らなかっただけでなく、妊活さえ制限されて次に進むことも出来ないという絶望的な状況の中、産婦人科へ通わなければならないなんて辛すぎる。普通に泣きそう。そんな中で経過観察をやり切った人たちを、心から尊敬する。
胞状奇胎の経過観察は終わったけれど
もうすぐ子宮内容物除去手術を受けて半年。胞状奇胎という残酷な病気は、今また向き合っている妊活にも暗い影を及ぼしている。
流産を経験すると、簡単には妊娠検査薬の陽性を喜べなくなる。胞状奇胎になってもそれは同じで、それに加えてまた胞状奇胎になったらどうしようという不安も加わる。また胞状奇胎になる確率は1%ほどらしいが、経験がない人の場合は0.1~0.2%と考えると高い。また、私は高齢なので若い人よりも胞状奇胎になる確率は上がる。
40代だから、基本的には妊活が上手くいかなくて当然だと思うようにしている。自分の心を守るために、これは仕方がない。2人目が無理だったとしても、どんな結果であれ自分の納得がいくまで妊活をやり切るつもりだ。
後悔する時って、大体は「やらなくて」後悔することが多い。何かをやって反省したり修正して次につなげることはあるけれど、やって後悔することってあまりないように思う。
ただ、胞状奇胎は病気だから、数年経ってから侵入奇胎や絨毛ガンになる可能性もある。流産などのように排出して終わり、というわけにはいかない。私が妊活をやって後悔してしまいそうなことがあるとしたら、胞状奇胎からの侵入奇胎や絨毛ガンになった場合だろう。
これが胞状奇胎の怖いところだと思うし、胞状奇胎の残酷なところでもある。
胞状奇胎になったせいで、ただでさえ高齢で難易度の高くなった妊活の辛さが倍増している。ここで諦められたら楽なんだけど、まだ胞状奇胎という病気のせいで理不尽な目に遭ったという虚しさや怒りが消えない。この原動力があるうちはまだ、諦められない。