先週末、近所のスーパーマーケットからトイレットペーパーが消えた。私はイギリス東部の町に住んでいるが、ここでもトイレットペーパーが買えなくなった。
イギリス政府の対応からすると予想はできたことなので、私からするとまあそうなるよね、といった感じだった。
日本のようにデマでトイレットペーパーが店頭から消えるにしろ、イギリスのように政府の対応をみて必要だと判断し店頭から消えるにしろ、一部の人が過剰に反応するせいで必要な人に行き渡らなくなることに変わりはない。
手に入りにくくなることが分かっているので、余分に確保しておきたくなる気持ちは分からなくもないが、こういった非常時の行動は人の本性が出るので興味深いなとは思う。
トイレットペーパーも数日すれば手に入るとは思うが、コロナウイルスに感染した可能性がある場合は、自宅にて14日間の隔離が必要になる(個人だけなら7日でOKだが、家庭ごとであれば14日)ので、そうなった場合でも対応できるようにしておかなければならない。
最悪の事態を考慮して、夫と私の二人が感染しても14日間は自宅で過ごせるくらいの備えはしておくつもりだ。2人とも持病はなく高齢ではないので、感染しても自然に治癒する可能性の方が高い。予防は徹底するが、生活できる分の備えがあれば何とかなるだろう。
ただ、夫と私の反応には差があった。
私は東日本大震災の時に店頭からトイレットペーパーや水、食料が消えたのを既に体験していたので大きなショックは受けなかったが、夫はこんな光景を見たのは初めてだと驚いていた。
恐らく、夫と同じように初めてこういった経験をするイギリス人も多いのだろう。もしかしたら、そういったことに慣れていなかったせいで、パニックを起こして買い漁る人や、予防の徹底に対する意識が低い人が多かったのかもしれない。
日本は自然災害が多いので、こういった緊急事態には少し慣れているのかもしれない。今回のコロナウイルスに対する個人の対応でも、日本人が周りに気づかった行動ができる人が多かったから、今のところは欧州のように一気に感染が拡大せず、遅いペースで感染が広がっているのだろうか。
日本政府の対応が悪くても、頑張れてしまう国民がいるから何とかなっているように見える。そう考えると日本人ってすごいな。
さて、今のところはイギリス政府の対応と日本政府の対応は近いものがある。
どちらにしても結局は、重症患者が優先的に医療を受けられるよう、軽症の人は検査はせずに自宅で安静にして自身の自然治癒力で回復させることで、医療機関のパンクを防ぐ、といった対応であろう。ここまで感染が広がればそうするしかない気もするし、合理的ではあると思う。
有効な治療薬やワクチンがない以上、自分の自然治癒力で治すしかない。多くの人が免疫を獲得するまで時間はかかるかもしれないが、未知のウイルスである以上、今のところはそうせざるおえないのだろう。
持病があり高齢である人の死亡率は高いが、有効な治療薬やワクチンがないのだから自身の自然治癒力が追い付かないのであれば、悲しいことだがもうそれは自然の摂理ともいえる。
イギリス政府の対応に関しては、もう少しできる事はあるんじゃないの?とは思いつつ、その潔さはちょっと笑える。夫はその対応が腑に落ちないようだったが、私からしてみれば日本政府よりは正直だと感じるので好感は持てる。
また、イギリス政府の対応は私の考えに近いから受け入れやすかった。世界でこれだけ感染が広がっているのだから、もうしょうがないよねと思わなくもない。
感染拡大は防げないなかでどうしていくか、を考えた上での決定なのだろう。
感染して自分の体がウイルスに勝てなかったら死ぬかも。でもそれは自分にはどうにもできないから、今の状況の中でどう生活していくか考えるしかない。
持病もなく高齢でもないので、感染しても回復する可能性の方が高いことを考えると、コロナウイルスによる経済的な打撃の方が気になる。
私がイギリスへ移住して数か月の今、夫の収入に頼らざるおえない今の状況では夫が倒れたらアウト。「自分がコロナで死んだ、夫がコロナで死んだ」はもちろん「夫の仕事がなくなった」となった時点で、生きていくのは厳しくなる。
どう考えても生き残るのを前提で、経済的な打撃にどう対処していくかを考えた方が良いだろう。
私は東日本大震災の時やその後の日本政府の対応を見てからは、彼らは嘘だらけで信用できなくなった。これからはコロナウイルスへの対応だけでなく、経済的な対応も重要になってくる。しかし、日本はお金を「貸す」政策ばかりで弱者には厳しいままだ。増税後にコロナの影響だから、日本はこのままだと貧困層にとっては特に辛い状況になるだろう。
イギリス政府はどうであろうか。
ホームレスも多くいるみたいなので、イギリスでもそういった貧困層に対しては何らかのサポートは必要だと思うのだが、残念ながら私にはまだイギリスのことがよく分かっていないので何とも言えない。
ただ、3月11日に発表した予算案では経済刺激策として総額300億ポンド(約4兆円)、そのうち120億ポンドをコロナウイルスへの対策費に充てるとしている。これを見る限り、緊縮財政は止めるようだ。
私は経済や政治にそこまで詳しくないが、大きな流れでみるとEU離脱という決断と同様に、こういった経済政策はこれからイギリス経済に良い流れを引き寄せるのではないかと考えている。
コロナウイルスについて考えてみても、非常時にはEUの仕組みはかなり危険だと分かるのではないだろうか。シェンゲン協定があったから欧州でここまで感染拡大したとも考えられる。私は今のところ、EU離脱というイギリスの判断は正しかったと思っている。
これも何年も経ってみないと分からないことなので、観察して面白がるだけだ。
経済政策を含めたコロナウイルスへの対応は、イギリス政府をはじめ、他の国がどう対応するかを観察するのは面白い。
日本にいないから日本政府の対応の影響はほぼないし、イギリス政府の対応は影響があるけれど私には選挙権もないので、ただ動向を観つつできる事をするだけ。
日本は母国だし生まれ育った場所なので、どうしても割り切れない何かがある。しかし、ここイギリスではできる事なんてないと明確に割り切れるせいか、日本にいるときよりはストレスが少ないかもしれない。
一個人ができる事なんて少ない。結局、自分の生活の中でコロナウイルスに対しては予防を、自分たちが生活できる生活必需品の確保を、必要な収入を得るための行動を地道にしていくしかないのだから。
家の掃除でもして衛生的に保ち、体にいいものを食べて、しっかり寝て、免疫力や自然治癒力を高めるしかない。
こういった緊急時に思うのは、家と畑があって、自給自足できる環境で生活するのが一番安全なのかもしれない、ということだ。
いつかはバンガローに住んで、家庭菜園でも持ちたいなあ…トマト以外で。