今日、「外国人美容師の就労可能に 訪日客対応などを期待」といったニュースを見た。更なるグローバル化推進の為に行うことの一つであろう。
コロナウイルスで混乱が続く中ご苦労様…といった感じだが、世界がグローバル化を止める方向へ動き始めており、さらに現在のコロナウイルスで世界がどうなっていくかも見えない中で、日本政府がそれでも今まで通りのグローバル化推進路線を変える様子は見られないことに、私は驚いている。
ニュースの内容は以下の通りだ。
政府は18日、国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)を首相官邸で開き、日本で美容師免許を取得した外国人留学生が特区で就労できるようにする方針を決めた。訪日観光客や在留外国人らへの対応の他、日本の美容技術を海外に伝える担い手になることなどを期待する。
外国人留学生は、日本の専門学校で2年間学び、国家試験に合格すれば、美容師免許を取得できる。ただ、美容師免許は就労可能な在留資格に該当しないため、現在は美容師として日本で働けず、母国に帰国する人が多いという。
時事ドットコムニュース 「外国人美容師の就労可能に 訪日客対応など期待―特区諮問会議」より
この記事が気になったのは、私が元美容師だからだ。
美容師として約7年ほど働いた後、同じく美容師免許が必要であるアイリスト(まつげエクステ施術者)としても数年働き、美容業に関わって十数年である。始めは美容師として独立して自分の店を持つつもりでいたし、アイリストになってからも美容の仕事とは真剣に向き合ってきたつもりだ。今はイギリスで生活しているので美容業から離れてしまっているが、今でも美容の仕事に対する思い入れはある。
さて、そんな中で気になったこの記事についてだ。
いろんな理由が考えられるとは思うが、美容業界がブラックすぎて離職者が多いことによる美容師不足の解消、といった面もあるだろう。
そもそも日本に日本人の美容師はたくさんいるし、私が働きだす前から美容室の件数はコンビニ以上あり、明らかにオーバーストアの状態が続いていた。求人なんて探せばいくらでも出てくるので、条件を選ばなければ働ける場所はいくらでもあった。
それでも働き手がいなかったのは、美容師のブラックすぎる労働条件・労働環境のせいだろう。
以前はシャンプー、カラー、パーマ、カット、ブローなど、どのようなお客さんの要望でも担当できるよう一通りの技術を身に付け、モデルを使って実践的な練習をしてやっと、一人前の美容師として働けたが、今はカラーのみ・パーマの一種である縮毛矯正のみ等でも、その技術ができれば入客できたりする。私が見習いの頃は平均して3年ほどで美容師アシスタントから一人前の美容師になっていたが、その修業期間中に辞める人が多かった。(参考→美容師の労働環境)
ブラックすぎて若い子たちが辞めてしまうのを防ぐためや、最近は他の業界と同様に即戦力を求める風潮もあったため、美容師が見習い (美容業界ではアシスタントと呼ばれる) として働く期間は短くなってきていたが、それでも労働条件は他の職種に比べて悪い。
基本的にブラックな労働条件だが、アシスタントとして働く期間は特に大変なので、美容学校を卒業して美容師免許を取得しても、一通りの技術ができる美容師になるまで続けられる人は半数くらいではないだろうか。
何が問題かというと、美容師免許を持っていても、美容業界の搾取に耐えかねて美容師として働くことを諦める人が多い、ということだ。
現状、美容師免許を取得しても、それだけでは実際にお客さんへ施術できる十分な知識も技術もない状態なのだから、外国人労働者が美容師免許を取得してもそれは変わらないだろう。
それとも、そういった美容業界の暗黙のシステムには入らない、外国人労働者独自のコミュニティや美容室があり、そこで働くのだろうか。疑問しかない。
そんな中でこの外国人美容師の就労可能に、というニュース。
「外国人留学生が特区で就労 」のような外国人労働者に関しては、以前から低賃金で働く搾取の対象のような扱いが問題視されることがあったと、私は記憶している。私からすると、ブラックな美容業界で働きたがらない日本人の代わりに、外国人に働いてもらおうという風に見えてしまうのだ。
日本の美容業界はブラックなので、外国人労働者は母国に帰ってから日本で身に付けた技術を磨き働く方が幸福かもしれない。
美容業界の新たな搾取対象として、辛い思いをしない様に願わずにはいられない。
もう一点気になったのは、「 訪日観光客や在留外国人らへの対応の他、日本の美容技術を海外に伝える担い手になることなどを期待」というところである。
観光客がわざわざ美容院に来るとしたら現地の日本人にやってもらいたい人が多いのではないだろうかと思うし、在留外国人なら日本人の美容師でも外国人の美容師でもどちらでもいいと思っている人の方が多そうだと思うのだが、どうだろうか。
そもそも、「日本の美容技術」とは何だろうか?
美容院で施術されるのは、欧米のスタイルの作り方をベースにしたものがほとんどだろう。カットでいえば例えばヴィダルサスーンやモッズヘア等、海外からの技術を元に使っているし、基本の理論があってそれをどう使って表現するかで個性がでるので、アウトプットの仕方に違いが出るだけだ。
特別に日本人の技術が優れているとも思わない。
それに、以前から外国人(主に西洋人)への憧れが見て取れるようなヘアメイクが多いのだから、それを日本の美容技術なんて言うとしたら笑える。外国人コンプレックスから生まれた日本の美容技術と言えるだろう。
それでは、日本の美容技術と言えるであろう日本髪についてはどうか。
これも残念ながら、日本髪が結える美容師は少ない。日本髪を学べる場所は少なく、美容師が習うアップスタイルは一般的なアップスタイルである西洋風のものだ。これらを日本の美容技術と言えるのだろうか。外国人に手伝ってもらう前に、日本人が日本の美容技術を身に付けようとはならないのだろうかと、思わずにはいられない。
色々思うことはあるが結局、日本政府の進めることだ。きっと一部の権力者にとってはオイシイ話なのだろう。
美容師免許の取得にも、美容学校で学ぶことや国家試験の受験にお金がかかる。もちろん日本の少子化や、業界のブラックさもあって若い人からは人気がない仕事になっていることも関係しているだろう。
利権がらみがあるとしか思えない。
数年前からまつげエクステの施術に美容師免許が必要になったのも、利権がらみの美容業界にお金を流すためだ。美容師免許なし、美容所認可なしの個人に稼がれては困る、ということだった。
美容業界は日本人からの搾取は諦めたのかな。
美容業界のブラックさに傷つく人が増えないことを願うが、変わらないかな。せめて彼らには逃げろと伝えたい。